起業の夢が叶う町にしたい

あつま次世代開拓民育成プロジェクト

目標額:15,000,000 万円

103%

ハスカップで町を日本一に。壮大な夢を叶え、道を切り拓き続ける挑戦者の物語

「あなたの夢は?」と聞かれて、大いに夢を語りそれを実現していく大人はどのくらいいるでしょうか。子どもの頃は、あれもこれもと尽きなかった「夢」も、年を重ねるにつれ現実との折り合いをつけ、少しずつ純粋な夢からは遠のいている人も少なくないのではないでしょうか。

厚真町に古くから自生するハスカップに光を見出し、他にはない品種を育てあげた母。それを受け継ぎ「厚真町を日本一のハスカップ産地に」という壮大な夢を実現した息子、山口善紀さんの姿には、人生を切り開き夢を叶えていくためのヒントがつまっていました。

「渋い、苦い」といわれた小さな実に可能性を見出し、「おいしい」を模索し続けた母。

ハスカップファーム山口農園は長年にわたり、ハスカップの新品種開発から6次産業化、移動販売や自然農法など幅広い取り組みをおこなってきたことが評価され、2017年に第10回コープさっぽろ農業賞北海道知事大賞を受賞しました。1978年に山口さんのお母さんがハスカップ栽培をスタートしてから40年。ここにいたるまでの道のりをうかがいました。

山口:山口農園は、1899年に淡路島からの開拓民として北海道に移住し、父の代までは米中心の兼業農家でした。私で5代目になります。ハスカップの栽培は、1978年からスタートして、当時、高値で取引されていたことに母が可能性を見出し、山や勇払原野から樹を選定して、3年かけて1,000本ほど敷地に移植しました。

当時のハスカップは、「酸っぱい、渋い、苦い」と言われ、お菓子に加工されるのが主な用途。栽培技術を模索する中で、お母さんはせっかく育てるのなら、「おいしいものを効率よく」という想いから善紀さんにあることを命じます。

山口:まずは、苦いのをどうにかしたい。ということで、白羽の矢が立ったのが僕と弟。「苦いのを見つけて印をつけたら、お小遣いをあげる」と言われたんです。当時は小学生でしたから、二人で一生懸命探しましたよ。(笑) 夏に印をつけておいた樹を秋に引き抜いて燃やすのを毎年繰り返していったんです。

「ハスカップなんてもともと苦いもんだべ」と、母は周りから変わり者扱いされてましたね。それでも気にせず続けていって、苦いのが年々少しずつ減っていったんです。

「子どもの舌は苦味に敏感だったからこそ、できたこと」と山口さんは振り返ります。やがて大人になった山口さんは、就職した会社でお母さんがしていたことの意味を知るのです。

山口:製紙会社に就職したんですが、配属された先がラッキーでした。森林資源研究所という部署で、新しい樹の品種を生み出していく姿を目の当たりにして「母が苦いハスカップの樹を抜いて燃やしていたのは、新しい品種を作るため(選抜育種)だったんだ。すごいことをやっていたんだ!」と、そこで気づいたんです。

34歳。ゼロからの農業経営スタート。

製紙会社でのサラリーマン生活中に、道内の研究所閉鎖による単身赴任、お父さんの体調不良などが重なり、2005年、山口さんはUターンし家を継ぐことを決意します。同じころ、地元の厚真ではハスカップにブームの兆しが見えはじめていました。

山口:観光農園にお客さんがハスカップを取りにくるようになって、喜んで帰っていく姿を見たら「こんな農家ならやってもいいな」と思ったんです。農業の経験も、経営の経験もない息子が継ぐことになって、母は周りから色々言われたみたいですけどね。

山口さん(左)、山口さんのお祖母さん(中央)、山口さんのお母さん(右)

周囲の声にも屈しないタフなお母さんは「40歳までに結果が出なかったらやめなさい」と、山口さんに期限を言い渡します。ハスカップの栽培も手探りの中、山口さんは結果を出すため、品種登録と販路拡大、さらには商品開発に取り組みます。

山口:最初に作ったのは、ハスカップを使ったかき氷。農協青年部時代に地域のお祭りで出したんですが、子どもたちが逃げていくんです。「ハスカップはおいしくないもの」っていう印象が子どもたちにも、親世代にもしみついていることを痛感しました。

じゃあどうしようか、と次に思いついたのがクレープ。生地に竹炭を練りこんだ黒いクレープを作ったところ、これが大ヒット!1日に300枚も売れたんです。

右のハスカップショップのブースは、車でけん引できる仕様になっているので移動販売が可能。このブースを移動させて、各地の催しに出店している。

 

ヒット商品のハスカップのクレープとハスカップスムージー。クレープの生地には竹炭を練りこんである。

失敗にも動じず新たな挑戦をつづける山口さん。商品開発のときに大切にしているのが、「物語をつくる」ということ。竹炭を使ったクレープは、厚真町が昔、北海道一の炭の産地だったことに由来します。黒い皮の中には、赤いハスカップジャム―見た目にもハスカップの実をイメージして作りました。

製紙会社での経験から、お母さんがハスカップの育種に取り組み、生でも食べられるおいしい品種を生み出したことに気付いた山口さんは、品種登録にも取り組んでいきます。

山口:日本一のハスカップ農家を目指し、品種登録に向けて動き始めたんです。3年かけて準備を進めて「あつまみらい」「ゆうしげ」という2つの品種を登録しました。品種を登録すると、権利をもっている人はふつう増やすことは許可しないんですよね。でも、私はまず厚真町を「産地として日本一」にしたいと思いました。それで苗木を買ってくれた人に「増やしていいですよ」って、厚真町内の生産農家さんだけで許可することにしたんです。周りからは「せっかく儲けられたのに、バカだな」って言われましたけど。(笑)

山口さんが「産地として日本一」にこだわったことには、あるきっかけがありました。

山口:農協の青年部時代に参加した町おこしセミナーで講師の方に「本当に町おこしをしたかったら、ぶっちぎりの一番にならなきゃいけない」と言われました。その言葉が心に響いて、「ぶっちぎりの一番」を常に目指してきました。観光のない街で、町にある資源を使った地域おこしの実例として、ゆずで有名な高知県の馬路村のように視察してもらえる町にしたいですね。

挑戦を続け、地域への普及と貢献につとめる山口さんのまわりには、次第に共感し、応援する人が集まっていきます。

山口:苗木を普及させるため、農協さんも協力してくれて、助成を開始してくれたんです。2008年にはじめたころはハスカップ部会員が60軒ほどでしたが、その後、農協さんの2年間の助成期間が終わると町からの助成がはじまり、2013年の調査では90軒以上に増え、ついに厚真町が日本一の栽培面積になったんです。ハスカップだけでなく、厚真町全体に良い流れがきていて、ある雑誌では若者が移住したい町のトップに入り、町おこしに必要といわれる「若者、よそ者」の人が移住してくれるようになりました。厚真町の人が移住者の方に引き合わせてくれるので「一緒に何かやりたいね」と話しています。みんなで町を盛り上げていきたいし、頑張っている人を応援していきたいですね。

「この年になって、こんな夢が見られるなんて」―ハスカップが広げた幸せの環

山口さんのハスカップは、栽培面積だけでなく周囲の人へも幸せの環を広げていきます。

山口:あるとき、ハスカップを栽培してくれている70歳くらいのおばあちゃんから、「山口さんに足を向けて寝られません。ありがとうございます」って言われたんです。話を聞くと、僕のとこの苗木を買って育てていたら、それを見て家を出た娘さんが手伝いに来てくれるようになったって。うちは娘が2人だから、自分たちの代で農家は閉めようと思っていたけど、「旦那さんが定年したら農家継ぐからね」と言ってくれたんだって。「この年になって、こんな夢が見られるなんて思わなかった」その言葉をもらって、僕もうれしくて一緒に涙しました。

前に進むことを恐れず、常に挑戦をつづける山口さんに今後の展望をうかがいました。

山口:生産量が増えてきたのに、需要がないと困るので町が厚真町ハスカップブランド化協議会を立ち上げて、私も所属し「厚真産ハスカップ」の商品開発やPRにつとめています。6次産業化の難しさを感じているので、北海道が主催する「地域フード塾」に参加し、マーケティングや商品開発、営業戦略などを学びました。これがきっかけで「ハスカップの佃煮」を思いつき、商品化しようと取り組んでいて、特産品のお米も併せてPRできたらと考えています。将来的には加工場を作って、催事などにも出店していきたいですね。

あとは産地として、高齢化と後継者の問題。町で用意してくれた1ヘクタール900本の新しいハスカップの畑を使ってもっともっとハスカップファンを増やしていきたいですね。そして、品質向上のために樹の剪定を請け負えるよう人材の育成にも取り組んでいます。農業支援員さんや主婦の方、元気な高齢者の方に手伝ってもらえるといいなと。ハスカップでどんどん町を盛り上げていきたいです。

山口さんは、ハスカップジャムなどの加工品も自ら町内で生産しています。

「私の見た夢に対して、みんなが応援してくれて、みんなの力があって、9年で日本一の産地をつくることができた」としきりに周囲への感謝を語っていた山口さん。夢をもち、挑み続ける人を応援し、サポートする土壌が厚真町にはあります。これからの山口さんの挑戦がますます楽しみです。

 

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文=高橋さやか

写真協力=山口農園

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