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“楽しむ”ことが一番の源。農家の主婦による厚真産ブランドジュースの物語。

2018.03.06

 

厚真町内の小売店などでは、トマトや紫蘇など地元産の野菜で作られた色鮮やかなジュース「プリンセス紫」「プリンセス蕃茄」などが販売されています。町の特産品として、最盛期には年間2,000本を売り上げていたプリンセスシリーズのジュースを作るのは、町内の主婦で結成された「手づくりグループあすなろ」の皆さん。

メンバーのほとんどは農家の主婦。家の仕事もこなしながら活動を続け、今年で20周年を迎えました。グループのリーダー小納谷道子さんは、20年間を振り返り「いい思い出ばかり」と柔らかい笑顔で話します。

支えてくれる人がいたからこそ、誕生したジュース

―20年前に、6人のグループでジュース作りを始めたそうですね。何かきっかけになることはあったのでしょうか?

小納谷:初めは孫に飲ませたかったの。知り合いから紫蘇で作ったジュースをいただいて、孫に飲ませたら「おいしい、おいしい」って言うもんだから、私も作ってみたくなってね。ちょうどその頃、農協の婦人部として関わっていた「おふくろ味噌」の加工場完成の祝賀会があって、農業改良普及センターの職員の方が出席していたから、作り方を教えてもらったの。そうしたら「お手伝いするから作ったジュースを販売してみない?自家用に留めておくのはもったいないよ」と普及センターの方に言われて、その気になっちゃって。

農家を中心に主婦のお友達を誘ったら「やってみようか」となり、平成9年に「手作りグループあすなろ」が誕生しました。紫蘇ジュースの「プリンセス紫」から始まって、3年くらい経ってからトマトジュースの「プリンセス蕃茄」も完成しました。

―なぜプリンセスというネーミングを付けたのですか?

赤紫蘇を搾ると、とても綺麗な紫色になるの。紫色って、なんだか高貴なイメージがあってね。ヨーロッパのお姫様を連想したの。それでプリンセスと名付けました。畑で育った野菜たちは、丁寧に加工してあげることで、とても綺麗な姿に変身するんです。

―当時は、加工や販売を行う生産者が周りにいたのでしょうか?

小納谷:当時は私たちみたいに農家が加工品を作って販売するのは珍しかったわね。昔の農家は今みたいに機械が普及していなかったから、家族全員で農作業をすることも多かった。だから加工して販売となると、たいていは農協や企業のような大きな団体が作っていたんじゃないかしら。

―農産物を商品化して販売することは、スムーズに進みましたか?

小納谷:大変でしたね。たくさんの人がサポートしてくれたおかげでできました。私たちは農家だから、野菜を育てること以外は本当に素人で。だから、いろんな人たちに助けてもらって。私たちだけだったら、とてもできなかったですね。

きっかけを作ってくれた普及センターの方には随分お世話になりました。レシピを作るのに、何度も味見をしてやり直しての繰り返しで、何日もかかって。夜中まで作業をした事もあったんだけど、ずっと付き合ってくれたのよ。

あとは、販売となると賞味期限やたくさんルールがあるでしょう。その辺の私たちが疎いところをサポートしてくれたの。今思うと普及センターの方に“おんぶに抱っこ”だったわね。

役場の方も背中を押してくれて力強かったですね。当時の課長さんのところにみんなで相談に行ったら、保健所について来てくれたこともありました。

他にもラベルを作りに協力してくれた人や、イベントで販売を手伝ってくれる方がいたり。みんなが応援してくれるから、私たちも頑張ろうって思えたのよね。

―プリンセスジュースには、どんなこだわりがありますか?

小納谷:こだわりは、何よりも自分たちが育てた野菜を使っていること。収穫のタイミングにもこだわってます。出荷用のトマトは、少し青いうちに収穫して追熟させるのが一般的だけれど、私たちがジュースに使うトマトは真っ赤になるまでじっと待つの。樹上で完熟して、しっかりと甘さがのったトマトを使うことによって、お砂糖を入れなくても甘いトマトジュースができるの。だからトマトジュースの原料は、トマトと少しの塩だけ。

みんな農家だけど、トマトや紫蘇の専門農家ではないから結構大変で。少人数だから、栽培がうまくいかないと原料が足りなくなってしまうしね。

それでも自分で育てて、よく知っている野菜だからこそ、お客さんに勧める時もしっかり説明できる。堂々と「おいしいですよ」って言えるんです。

楽しくなければ続かない

―販売を開始してどうでしたか?

物産展に出店した時なんかは本当によく売れました。「こんなに売れていいの?」と思うくらい。いろんなイベントに出店しては、大きな声を張り上げて、みんなで一生懸命売りました。自分たちが作った野菜を加工して、お客さんに直接販売するのって楽しくてね。お客さんに「おいしかったからまた買うよ」って言ってもらえると、何より嬉しかった。

―メンバーの皆さんは農家の仕事も忙しかったと思いますが、ジュース作りとの両立は大変でしたか?

小納谷:昔は週に1回のペースで作っていたわ。みんなそれぞれに農家の仕事があるので、合間を縫うように集まっていたの。みんな忙しかったと思うわ。でも、売れるのが楽しみで頑張れちゃうのよね。女って強いのよ(笑)。

ジュース作りで家を空けることも多かったけれど、自分たちの稼いだお金でお父さんにもプレゼントを買えるから、ちゃんとご機嫌取りもできたわね(笑)。忙しかったけれど、充実していたわ。

―一番のモチベーションは何だったでしょうか?。

小納谷:ジュースが売れることは、やる気につながりましたね。ただ儲けるだけじゃなくて、ジュースを売って稼いだお金で毎年のようにみんなで旅行に行ったことが、とても楽しかった。宮島、白川郷、四国、岡山・・・日本中あちこち行ったわ。京都は2回も行って。紅葉がとっても綺麗でね。

いつも稲刈りが落ち着く11月頃に旅行に行くので、夏場にジュースを作っていても「今年はどこに行こうか」って話ばっかり(笑)。休憩中もパンフレットをたくさん並べて「あそこ行きたい」「これが見たい」ってぺちゃくちゃお喋りしながら計画を立てて。旅行はもちろん、旅行に行くことを考えながらジュースを作るのも楽しくて、結局1年中楽しかったわね。それが20年。20年間いい思い出がいっぱいよ。

―楽しかったから20年も続けてこれたんですね。

小納谷:そうね、やっぱり楽しくなくちゃね。孫の喜ぶ顔が見たくて作ったジュースがこんなに続くなんて思ってもいなかったわ。

物産展などに行くと、いろいろな地域の方と何度もご一緒するでしょう。自然と顔見知りになって、お互いに情報交換をすることもあったわね。そうやって町外にも知り合いができたのもジュースのおかげ。家の仕事ばかりしていたら知らなかった世界でしたね。

私は農家の家で育ったから、小さい頃から農作業を手伝わされて。秋なんて子どもなのに夜中まで稲架掛けをしたり。だから農家にはなりたくないって思っていたんだけどね、今は農家でよかったわあ、とつくづく思うわね。

メンバーや応援してくれる人のためにも、ジュース作りの火を消したくない

―ここ数年は3人のメンバーで頑張っていたそうですね。

小納谷:そうですね。体調不良や高齢化もあってメンバーは減ってしまって、3人になったタイミングで、私は正直「そろそろ潮時かしら」と、他の2人にこれからどうしたいかを聞いたの。そうしたら、2人はやめたくないって。人数は減っても集まることが楽しいからと。それで私もまだ頑張ろうと思えたの。メンバーが楽しいと思える場を無くしたくないじゃない。そして、今までたくさんの人にお世話になって応援してもらった訳だし、昔からずっと買ってくれるお客さんもいるから、「プリンセスジュースの火を消しちゃいけない」っていう思いがあるの。

―プリンセスジュースのファンの方たちは、どういった方が多いのでしょうか?

小納谷:町内の方が自家用やお土産に買ってくれることが多いですね。地元の飲み屋さんでは焼酎の割りものに使ってくれたり。

あとは、厚真を離れてしまった方にも常連さんがいて。定期的にご注文をいただくんだけど、ジュースを発送する時にお漬物や野菜なんかの“ちょっとしたもの”を一緒に入れることもあります。少しでもふるさとを感じてもらえたら嬉しいな、って思って。

町を離れてしまった方も、そうやってふるさとと繋がっていられることって、町にとってもいいことじゃないかしら。だから、ほんの僅かかもしれないけど、私たちやプリンセスジュースがそのきっかけになれば嬉しいわね。

―まだまだ辞めるわけにはいきませんね。

小納谷:でもね、続けようとは言ったものの、私はもう75歳だし他の2人も60代。やっぱり3人だと作業が大変なこともあってね。それで今年、若い農家の奥さんに声を掛けてジュース作りに誘ってみたの。そうしたら、数名の方がメンバーとして活動してもいいと言ってくれて、20年目にして初めてメンバーが増えることになったの。おかげで平均年齢もぐんと若返ってね。若い方はやっぱり元気だし、機械の操作を覚えるのも早くて助かるわ。

―新しいメンバーが入ってくれて一安心ですね。次世代のメンバーに伝えていきたいことはありますか?

小納谷:今はいろんな地域で似たような商品が作られているし、農家が加工品を売ること自体が珍しいことではないから、昔みたいに作ったら売れるという時代ではないのかもしれないわね。でもあまり収支の数字にとらわれないで、私たちみたく楽しんで欲しくて。色々なイベントに出向いて、外の世界を広げるのもきっと楽しいわよ。やっぱり、楽しいことが一番よ。お父さんが不機嫌にならない程度にね(笑)

後日ジュースの加工場にお邪魔すると、慣れた手つきで楽しそうに手と口を動かす3名の姿がありました。家庭や家の仕事も大切にしながら、自らの手で新たな世界を開拓し、やりがいを築いてきた皆さん。新メンバーの加入により、これからもジュース作りが続けられることを、「これでやっと引退できるわ」と冗談を言いながら喜んでいました。

 

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文・写真=渡辺路子(ロッシグラフィカ)

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