あつまの魅力をモノ・コトにする

モノづくり、コトづくりの
挑戦者たち

「厚真町ローカルベンチャースクール2018」最終選考会。採択された中川貴之さんの、思い描く理想の林業への挑戦

2019.04.05

「厚真町ローカルベンチャースクール(LVS)」の最終選考会が2019年3月2日に行われました。
2018年9月の北海道胆振東部地震の後、一度は見送らざるを得ないとの判断をしたものの「再起動」することになり、決行された最終選考会。
それだけに、プレゼンテーションをするエントリー者にも受け手側にも、熱意がこもりました。
見事最終選考会を通過した三人のうちの一人が、36歳の中川貴之さん。彼が見つめる“未来の林業”を紹介します。

 

持続可能な森の使い方をしたい

中川:僕は林業や製材の仕事をして13、4年になります。僕の構想、やりたいことの一つ目が、「持続可能な森の使い方をし、未来に引き継ぐこと」です。僕は22歳で林業の世界に入り、その1年目のとき、厚真町で11トンのトラックに乗って山から工場に丸太を運んでいました。運んでいた丸太のほとんどは、紙の原料になる広葉樹です。

50、60年生ぐらいの広葉樹の森を丸裸にしてしまうんです。自分がいた会社が悪いわけではなく、これが日本の林業全体、——とくに北海道で多いのですが——で起こっています。山を所有している人にとっても、木を伐る林業会社にとっても、丸太を買う製紙会社にとっても一番効率がいいやり方だからです。

最終選考会でプレゼン中の中川さん。

しかし、このような方法で一度伐られてしまうと、山(林業で「森」のこと)は回復するまでに場合によっては70~100年ほど時間がかかります。北海道では、今まで漠然と「山がたくさんあるから大丈夫だろう」と思っていたんですけれど、最近になって「木の成長のスピードに比べて木を伐り過ぎている」と多くの人が感じるようになってきています。

ただ、僕は単純に「木を伐ることが悪い」とか「自然を守ろう」と言いたいわけではありません。地域には重機を使った生産力の高い林業会社も必要ですし、製紙産業も重要な産業だと思っています。

そのうえで、短期的な利益のためだけに安い丸太を大量に供給して森を食いつぶすような林業をするのではなく、これからは森を持続的に使って将来に引き継げる仕事をしなくてはいけないと思っています。

植林で育てることが技術的に難しい広葉樹の山では、とくにその必要性を感じています。こういった現状はすぐに変えることはできませんが、10年、20年という時間のなかで、社会の森に対する価値観を変えていくことはできると信じています。そのための一歩を厚真町で踏み出せればという想いです。

また、最近時代も変わってきて、これまでやっていなかった広葉樹の間伐が始まってきました。でも、これは先ほどの山を丸裸にする方法よりもかなり効率が悪いやり方です。だから間伐の仕事を続けて山を育てる林業をするために、そういう場所から出た丸太を高く売る必要があります。

一つのアプローチとして、製材して使える丸太はできるだけ紙の原料にするのではなく、少しでも多く製材して付加価値を高めていくことが解決策の一つになるのでは、と考えています。一本の丸太から最大限の利益を生み出すことで、山主や林業関係者だけでなく地域にとってもプラスになるような仕事をしていきたいです。

やりたいことの二つ目は、短期的な利益のために消えていく森がある一方で、本当は製材して使えるのに「細い」「曲がっている」「節が大きい」といった理由で使われない木や、公園の木や街路樹のように流通の都合で使われない木が存在します。こういう今まで見放されている木も、使っていきたいんです。

そして三つ目は、広葉樹以外の足元の資源をもっと生かすことです。木材としては優秀なのに、安いパレットなどの量産の利用しかされていないカラマツは、建築やデザイン系でオーダーメイドに対応して、地域資源を見える形で使っていきたいと思っています。伐採した地域や経緯などのストーリー性を全面に出した家具の材料、一枚板、フローリング、壁板などをつくってみたいです。

上の写真は22歳、下の写真は31歳のときの仕事中の様子。(写真提供:中川貴之)

 

製材・加工の現場を20社ほど見て、可能性が見えてきた

— それはどうやって実現していく予定なのですか?

中川:事業のイメージ図はこんな感じです(以下の画像)。自分で描きました。真ん中にあるのが製材工場で、これを中心としたサイクルをつくっていきたいです。まず木材の調達では、環境負荷の少ない小面積の伐採や間伐で出た木、家や畑の周囲の木、倒木などを中心に活用し、持続可能な仕組みにできたらと考えています。

それを、家具の材料や床板として販売したり、薪の需要などにも対応したりして、外部だけでなく地域のニーズに応えていきます。その木がどうやって届いたのか、ストーリーもあわせて伝えていきたいです。

また、副産物として出てくる、板にはならないような木材はチップ化して熱エネルギーにし、バイオマス乾燥機、ビニールハウスを使用した農業などに活用できないかなと構想中です。いきなり全体を始めることはできないので、一つずつスタートしていきます。

こういう構想の実現は、決して一人でできるものではありません。新しい発想で地域に根差した林業をしている人たちや、デザイナーさん、木工作家さん、建築家さん、そういう人との連携が大事だと思っています。そのためには、やはり製材工場が必要だと考えています。

これから販売予定の板。(写真提供:中川貴之)

構想を動かすためには、仕入れルートからトラック、重機、製材機、乾燥機、加工機械、売り先のルート、日々の運転資金など、すごくお金がかかります。でも、自慢ではないですけど、お金はないです(苦笑)。製材や乾燥は初めのうち借りられるところがあるものの、購入するとなると一つひとつの金額が大きいので、ビジネスが動き始める前から投資はできないと思っています。

じゃあ、お金の調達をどうするか。まだ今の段階では僕に対する信用も実績もありません。でも、三つの構想を見失わないで、信用と実績をつくるところから始めないといけないと思っています。

2018年の夏に僕が丸太で仕入れて、自分で製材したり製材してもらった板があるので、まずそれを売り切ります。丸太で買ったお金より高くします。ちょっと見ていてください。一つずつ、やっていくしかありません。

長野や岐阜などの製材・加工の現場を視察した。(写真提供:中川貴之)

やると決めたら、冷静にかつ大胆に思い切って進む

— LVSで変化があったのですね。

中川:長年この仕事をやってきて、思うところがあってLVSにエントリーしたわけですが、実はエントリー後も悩んでいて……。

また、『エーゼロ』の牧大介さんの本『ローカルベンチャー』(木楽舎)を読んだら、「自分で考える筋力」というフレーズがあったんです。それを読んだとき、「自分にはその筋力が全然ない……」と感じました。

実は、最終選考会のわずか3日前まで、ボロボロだったんです。もう半泣きでしたね(笑)。メンターの花屋雅貴さんに話を聞いていただき、自分でも考えました。「一般的な林業に戻って、森で働いて満足できるか」「製材工場で鋸かけてたら満足するのか」。そう考えたら、満足できないんです。やっぱり全体をつくっていかないと自分は満足できない、と。やっと、気持ちの整理ができました。

林業で、トラックから丸太を降ろすとき、どうやるか知っていますか? あえてブワーンってアクセルをふかしてバックして、急ブレーキをかけて、慣性の法則でドーンと落とすんです。勢いが半端だと丸太の滑りが悪くて車がウィリーする(前輪が地面から浮き上がる)こともよくあるし、変な場所に落とせば怒られる。初めて見たとき「こんなこと、自分ができるのか……」って驚いたんですけど(笑)、林業1年目で、大型車も初めてなのに「やれ」って言われて、怖かったけどやってみたら、意外にもけっこうできたんです。うまくやるためには中途半端はダメで、思い切ってやらなくてはいけない。

だから、今回もやるって決めたら、冷静にかつ大胆に、思い切っていくしかない。そういう心境です。やっと「自分で考える筋力」がつき始めているのかもしれません。筋肉痛が起こるかもしれませんけど(笑)、「千里の道も一歩から」ということで、頑張ります。応援よろしくお願いします。

 

聞き手・文=小久保よしの
写真=(株)エーゼロ厚真
写真提供=中川貴之

 

中川貴之
住所:〒059-1625 北海道勇払郡厚真町美里

あつまの魅力をモノ・コトにする

モノつくり、コトつくりの
挑戦者たち

『あつまんま』とは
北海道、厚真町の魅力をそのまんま伝え、
次世代にこの幸せがつづくためのプロジェクトをみんなで立ち上げ
みんなで応援するコミュニティーサイトです。

詳しくはこちら